タケナカ、SWAG、シムディレクトを率いる長崎英樹氏が語る、イマーシブ体験の現在と未来。プロジェクションマッピングの変遷から、五感を刺激する没入型空間演出、そして1970年万博を3DCGで再現する最新プロジェクトまで。テクノロジーと感性が織りなす新しい体験空間の可能性に迫る。
イベントマーケティングの樋口陽子とイベントレジストのヒラヤマコウスケがホストを務める「コースケ・よーこのミュートを解除」第196回。4月25日の放送では、株式会社シムディレクト代表取締役、株式会社タケナカ専務取締役、SWAG取締役の長崎英樹氏をゲストに迎え、プロジェクションマッピングやイマーシブ体験の最前線についてお話を伺いました。
長崎氏が所属する企業グループは、タケナカを母体として発展。タケナカは映像のハードウェアセッティングやオペレーションを担当し、大型プロジェクターやLEDビジョンを使った空間演出を手がけています。SWAGはそのクリエイティブ部門が独立したもので、映像コンテンツの企画を行い、シムディレクトはそれらを統括するプロダクション会社としての役割を果たしています。
長崎氏によると、日本でのプロジェクションマッピングは2008年頃から始まり、2012年の東京駅でのプロジェクションマッピングをきっかけに一大ブームとなりました。しかし2015年頃から大型の屋外マッピングは減少傾向に。その一方で、室内やショールーム、エントランスでの利用など全体の数は変わらず、ナイトイベントや空間演出の一部として進化し続けています。
現在のトレンドとして注目されているのが「イマーシブ」体験。日本語で「没入感」を意味するこの言葉は、観客が作品世界に入り込んだような体験ができる演出を指します。長崎氏らが手がけたよみうりランドの「HANA・BIYORI」では、2020年3月にリアルの植物とデジタルエンターテイメントを融合させたイマーシブ体験を提供しました。
イマーシブ体験の定義についても興味深い見解が示されました。必ずしも映像で360度囲まれている必要はなく、「没入感が体感できる演出」であればイマーシブと呼んでよいとのこと。視覚だけでなく、聴覚、嗅覚を組み合わせることで、予算に応じた没入感の演出が可能だといいます。
最近の事例として、大阪万博に関連したプロジェクトが紹介されました。1970年の大阪万博から55年、2025年の大阪・関西万博を記念して、太陽の塔前でイマーシブシアターを開催。役者が1970年当時の衣装を着て演技し、観客はスマートフォンを通してARで1970年のパビリオンを再現した映像を見ることができるという融合的な体験を提供しました。
さらに今年9月16日、17日には万博会場内でスクリーンに囲まれたイマーシブ空間を作り、1970年のパビリオンを3DCGで再現したイベントを予定しているとのこと。ただ、55年前のパビリオンの権利関係が不明確で、再現の許可を得るのに苦労しているという裏話も明かされました。
将来のイマーシブ技術についても言及があり、現在は視覚・聴覚・嗅覚のコントロールが可能になっているものの、今後は味覚や触覚も含めた五感すべてをコントロールできるようになれば、さらに没入感のある体験が可能になるのではないかと展望を述べました。
また、長崎氏らが目指しているのは、単に高価なハードウェアや最新技術を駆使することだけではなく、人々の心を動かすような体験を創り出すこと。SWAGの内覧会では、映像を一切使わず、気象データをリボンと風で表現したインスタレーションが印象に残ったという話も出ました。
テクノロジーの進化は、クリエイターの「表現したいこと」から生まれるという視点も共有されました。やりたいことを実現するために技術が発展し、それがまた新しい表現を可能にするという好循環が、イマーシブ技術の可能性を広げているようです。
番組の最後では、55年後の未来に向けて今からパビリオンの許可を取っておくべきではという冗談も交わされつつ、メタバースやマルチバースなど、10年後、20年後のイマーシブ技術がどう発展していくかという期待が語られました。
「コースケ・よーこのミュートを解除」は、イベントの中の人やプロフェッショナルをゲストに迎え、リアルの価値や魅力を探る番組。次回の放送もお楽しみに。
TAKENAKA Technical / SYMUNITY GROUP 公式チャンネルhttps://www.youtube.com/@takenakatechnicalsymunityg3511
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